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【小説】ココロの居場所 16

​部屋に入ってベッドに座り、母に電話を入れる。
取り敢えず美春のお迎えを頼まないと。
さすがにこの状態で保育園に行くのは勘弁して欲しい。
柚葉が冷蔵庫からアイスノンを取り出し、タオルを巻いて持って来た。
こんな物まで買ってあったとは、母も準備が良いと言うか、なんと言うか。
僕はそれを受け取って頬に当てたまま、母に事情を説明する。

腫れの具合にもよるが、妻に何か突っ込まれた時に説明のしようが無い。
殴り合いのケンカをする歳ではないし、転んだにしては派手すぎる。
出来れば柚葉の事は妻に知られたくない。
色々面倒だし、ろくな事にならない。

ともかく、今日は母が家に泊まってくれることになった。

「ごめんなさい」
すぐ横で話を聞いていた柚葉は、僕が電話を切った途端に謝った。

「柚葉のせいではないから、もう謝らないで」
柚葉は何も言わずに、僕に寄りかかってきた。
「やっと名前で呼んでくれた……」
「あぁ、うん……」
「嬉しい……」

青春している場合じゃない。
少し距離を取るように言われていたのに、キスをされてしまったじゃないか。
柚葉の病状が悪化したらどうするのだ。

いや、拒もうと思えば拒めたはずだ。
情が移ったのか。
柚葉が側にいる事が、心地良く感じる。

いや、いや、いや。
しっかりしろよ。
何をその気になってるんだ。
今の柚葉の状態は、彼女の病気のせいだ。
あと2週間もしたら、柚葉はシェルターに入る。
多分、二度と会う事はない。

柚葉に癒しなんか求めるな。
そもそも僕は妻子持ちのおっさんで、彼女はまだ18だぞ。
癒しとか、何言ってんだ。
自分の役目を粛々とこなせ。
僕の役目は、あと2週間柚葉を守ること、ただそれだけだ。


いつの間にか、柚葉は僕に体を預けたまま眠っていた。
僕が側にいると安心するのか、柚葉は眠ってしまう事が多い。
夜はあまり眠れないと言っていた。
眠りは浅いし、少し眠っても悪夢で飛び起きるのだそうだ。
寝ても覚めても悪夢の中か……。

僕は柚葉を起こさないように、そっとベッドに横たえて、思い出したようにアイスノンを裏返して頬に当て直した。

柚葉をただ、眺めているだけで時間が流れて行く。
とても落ち着いた、穏やかな時間だ。
何を考えるでもなく、ただ柚葉を眺めているだけ。
彼女から、何か穏やかな流れが僕の中に流れ込んで来るような感じがする。
こんな時間がずっと続くなら、それは幸せと呼んでも良いのだろうか。

僕に必要なのはこういう時間だったんじゃないのか。
こういう、穏やかな時間を望んでいたんじゃないのか。
僕には、心に安らぎを与えてくれる人が必要だったんじゃないのか。

例えば……。
そう、例えば、柚葉のような人が。



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この物語はフィクションです。
登場する人物、団体、組織等、すべて架空の物です。
投稿単語に制限がある為、単語に半角スペースが入っている事があります。
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コメント

非公開コメント

No title

二週間は短いようで長いですな。
外野から眺める分にはあと二週間で爆弾から離れられるという気持ちですが、手塚さんにしてみればどうやら情が移ってきているようなので、何事もなく二週間過ぎても気持ちの整理が大変そう。
まあ何事もないわけないと思いますが。^^;

Re: No title

きにちみさん
何もなければ3行くらいで終わっちゃいますよw
プロフィール

Nocky

Author:Nocky
ILLUSIONのゲーム"プレイクラブ"、"ハニーセレクト"、"プレイホーム"のSSと、キャラに着せる洋服をメインに扱っています。
登場するモデルは全て成人です。

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